おそらく少数派、いや、私しかいないのではないだろうか…。

そう、私は社会人なのである。

学生時代に半年間Bolognaに留学していたのだが、あの時半年しか行けなかったことをずっと悔やんでいた。

自力で貯めたバイト代だけでは1年分のお金を工面することはできなかった。仕方がないといえば仕方がない。

それでもあわよくば、人生2度目の留学をしたいな…と、目論んでいたところにこのような状況となり、旅行にすらいけなくなってしまった。

2015年に留学して以来、イタリアに行かなかった年はなかった。今年初めて1年も行っていない計算になる。

どんな悪あがきでもいいから海外への夢と憧れ、何よりイタリアを近くに感じることを諦められないまま日々を過ごしていた。

昨年末にひょんなことからカフォスカリ大学の自由会話に参加させていただくことになり、その流れからこちらのバーチャル留学に参加することとなったのだ。

…ここで気づく。

「バーチャルとはいえ、これはイタリアへの2度目の留学なのでは…?」と。

もちろん思い描いていたのは、イタリア現地での留学であってバーチャルという形式ではない。

とはいえ、案外有言実行というか思っていれば願いは叶うもので、イタリアをあきらめずにいるとこういう体験に出くわす。

5年前に留学した時は、全くイタリア語ができず、なんなら英語すらも危うい状況だった。

日本へ帰る頃になってやっと、人の言ってることが聞き取れるようになり、自分でもなんとか言いたいことを少しずつ伝えられるようになった。

そんなタイミングで帰ることになったので「もっとイタリア語ができていたら、もっと留学生活を楽しめたのかなぁ…」と思っていた。

5年たった今、日常的に会話することはないものの、多少は知識があるのであのころに比べればイタリア語がちょっと理解できる。

この留学では基本的に日本語での会話がメインなので、私も特別イタリア語をたくさん話すわけではない。

それでもやはり、何か日本語でわからないことが出てきた場合や、微妙なニュアンスの違いを説明するときに私の少しばかりのイタリア語が役に立つときがあった。

「あなたはイタリア語が分かるのでとてもやりやすい」と言ってくれた学生さんもいた。

これはとてもうれしい。

特にうれしいとか、楽しいとかそういう気持ちを共有できたとき、私は「コミュニケーションがとれたなぁ」と実感する。

日本の、それもあまり外国人に出会うことがない町に住んでいると、この喜びを味わうのはなかなか難しい。

でも、この喜びは一度味わうと忘れられない。これがない生活はとても物足りなく感じてくる。

あの頃の留学生活はこの喜びに満ちていた。

そして、このバーチャル留学でもこの喜びを再び味わうことができた。

プロジェクト自体は正直思っていたよりも私にとってはヘビーで、よく寝不足になったのは事実。

それでも授業で出会う学生やプロジェクトメンバーが私から得た情報や、その会話内容で喜んでくれることがあるのなら…と思うと、なんだか「頑張らないといけない!」と、夜中でも突然やる気が出たりして。

かつて留学した際、イタリア人学生の勉強熱心さに驚かされたことは今でも鮮明に覚えている。

あの時にその姿を目の当たりにしたことが功を奏したとでもいおうか…。

彼らが必死に勉強している姿を想像すると、こちらもそれ相応の覚悟で挑まなければならない!!…という気持ちになる。

私がこの留学プロジェクト内でかかわった人に対して何か良い影響を与えられたのかどうかに関しては、私が判断することではないので正直わからない。

もし、だれか一人でも、ささやかなことであっても記憶に残るような出来事を私が残せていればいいのだが…。

さて、この留学プロジェクトの中には本来留学をする予定だった人がたくさんいたのではないか?と思う。

日本から飛び立つことも、どこかの国から日本にやってくることもなかなか難しいのが現状だ。

悔しい思いや、不安な思い、たくさんの葛藤や絶望感すら味わった人もいるかもしれない。

でも、どうか一度思い描いた夢をあきらめることだけはしないでほしい。

今ここでつながることができた人と、きっと世界のどこかで会える未来を想像して生きていくのはとても素敵なことではないだろうか?

私がイタリアで過ごした時間は留学した期間と旅行した時を全部合わせても、おそらく1年にも満たない。

そんな短い時間の中ですら、日本でボーっとしてるだけではありえないような奇跡や出会いでいっぱいだった。

そしてご縁は更なるご縁をつないでくるもので、幾度となく「人生って面白い」と、思わされたものである。

これはもしかしたらイタリアあるあるなのかも…と、イタリアに留学していた身だから思うのかもしれないが、あながち嘘ではないと信じている。

なのできっと、この留学プロジェクトの経験もそういったことのきっかけになる… かもしれない。

このプロジェクトを通して新たな出会いがあった人もたくさんいるだろう。

それはつまり、もうすでに未来で何か楽しいことが起こる前段階であって、

世界的にこの状況が好転した時には一体どんな面白いことが待ち受けているのだろう?

…こうやって想像するだけでも、きっとこのプロジェクトに参加した意味は大いにあるのではないだろうか。

「自分で起こした行動が自分の未来を創る」

そう信じてこの時代をたくましく、そしてしなやかに生き抜いていきたい。