教育にあるジェンダーギャップは開発途上国だけではなく、先進国の問題でもある。特にSTEM教育の点から考えると、この問題はよく見られる。STEM教育というのは、科学・技術・工学・数学の教育分野を指す。高等教育では、STEM教育で勉強したり働いたりしている女性の割合は35%だ。研究者の点から考えると、女性はたった28%だ。マリー・キュリーがノーベル物理学賞を受賞してから、物理学、化学、医学のノーベル賞を受賞したのは、男性が572人であるのに対して、女性はたったの17人だ。それだけではなく、女性は成長する中で、少しずつSTEM分野に興味を無くすそうだ。
しかしどうしてこんな状況があるのだろうか。理由は色々だ。ただの教育の問題ではなく、社会的な問題である。STEM教育は「男っぽい」フィールドなため、女性たちはSTEM教育のための能力がなく、他のフィールドで勉強するか働くようにとよく言われた。家庭でもこの意見が時々ある。両親の教育のバックグラウンドの質が高くないと、STEM教育で勉強している女性をあまりよく思わないはずだ。
グループのメンバーの出身国であるイタリアと日本を比べ、STEM教育やSTEM分野でのジェンダーギャップについてまとめた。
イタリアのSTEM教育と言えば、男女平等はまだ達成していないとのことだ。2018年にMIUR(イタリアの文部省)によって行われた調査によると、そのジェンダーギャップを数値化すれば、STEMの教育を受けられている人達の中で女性の割合は約37%だそうだ。STEMの科目で女性はとてもいい成績を取るそうだが、科学・技術・工学・数学に特化した学校を選ぶのは、男性よりも女性のほうが少ない。偏見やステレオタイプがその長年の問題の大きな原因だと言われる。トリノ大学によって行われたイタリアのピエモンテ州におけるSTEM教育のジェンダーギャップの現状、理由についての研究によれば、その男女格差は「男性なら科学などが得意だが、女性なら人文科学が得意だ」という考えから来るそうだ。その家族や学校、社会における考えは、幼少期から女の子に重要な影響を及ぼし、自信がないという気持を与え、その「コンフィデンスギャップ」はSTEMの分野で働いている女性が少ないことに繋がると言われる。他にも、学校はとても大切な責任があるが、イタリアではその問題の深刻さが理解されておらず、認識を高め、偏見を解除するための活動を行っている学校がほとんどないため、現状がより良くなるように、大きな社会的な変化が必要だ。
日本のSTEM教育は海外に比べるとかなり遅れていると言われている。(日本ではSTEMよりも、数学や科学を専門的に学ぶ“理系”という言葉が一般的だ。)OECD(経済協力開発機構)が2019年に行った調査によると、大学などの高等教育機関に入学した学生のうち、理系分野に占める女性の割合は、日本は27%でOECDの加盟国の中で最も低かった。OECDは「日本では女性の進路に関するイメージの押し付けが強いことに加え、身近に理系分野で具体的な目標となる女性が少ないことが影響している」と指摘している。STEM教育を広げるために、日本では様々な取り組みが行われている。小学校でプログラミングの教育を必修化することで、幼いころから情報技術について学ぶとともに、論理的思考力を養うための教育が目指されている。また、科学的能力を養い国際的に活躍できる人材を育てる高校をスーパーサイエンスハイスクールとして指定し、理系に進学する学生を支援している。
「質の高い教育を皆に」SDGs4グループ3(カンタ・ドナテッラ ジロット・シルヴィア ピンナ・アレッシア 伊藤歩海 小川日向子 安岡里都)
ソース
・https://en.unesco.org/news/new-unesco-report-sheds-light-gender-inequality-stem-education
・https://unesdoc.unesco.org/ark:/48223/pf0000253479
・https://valored.it/news/gender-gap-nelle-stem/
・https://www.ledizioni.it/stag/wp-content/uploads/woocommerce_uploads/2019/07/Berra_Cavaletto_web.pdf
・https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210920/k10013268041000.html
単語リスト
開発途上国 | かいはつとじょうこく | Developing countries |
先進国 | せんしんこく | Developed countries |
高等教育 | こうとうきょういく | Higher education |
ノーベル物理学賞 | ノーベルぶつりがくしょう | Nobel Price in Physics |
受賞 | じゅしょう | Win a price |
達成する | たっせいする | Achieve |
数値化 | すうちか | Quantification |
科目 | かもく | Subject |
偏見 | へんけん | Prejudice |
人文科学 | じんぶんかがく | Social sciences |
幼少期 | ようしょうき | Early childhood |
解除 | かいじょ | Cancellation |
理系 | りけい | Science |
経済協力開発機構 | けいざいきょうりょくかいはつきこう | Organisation for Economic Co-operation and Development |
占める | しめる | Occupy |
加盟国 | かめいこく | Member nation |
指摘する | してきする | Point out |
幼い | おさない | Very little |
24 10月 2021 at 16:23
SDGs4グループ3の皆さん、この記事を書いてくれてありがとうございます。とても面白かったです。確かに、STEM教育の点からもジェンダーギャップというテーマを詳しく探るのは面白いです。そして、私は「科学的能力を養い高校」みたいな高校に行って、大学は他のフィールドを選びました。それは育った環境のせいかなあと思います!
26 10月 2021 at 5:43
私が通っていた高校にも理系クラスがありましたが、ほとんどが男子を占めていました。たしかに理学系と聞くと科学や工学など男子が行う類だという固定概念をもってしまう傾向にあると思いました。
28 10月 2021 at 22:43
このよく研究した記事ありがとうございます! 職業面でも教育面でもジェンダーギャップの問題は、経済成長のために熟練労働者に依存している国にとっては特に問題です。例えば、日本は競争力を維持するために、STEM分野の熟練労働者に依存していますが、これは輸出志向の経済がある国すべてに当てはまる傾向です。このような国では、特に女性をSTEM分野に惹きつけることができなければ、グローバル化した世界で競争力を維持することは難しくなるでしょう。
26 11月 2021 at 14:46
興味深い記事をありがとうございます。
日本では、何年か前に、大学が入試の採点の際に、女性の受験者の点数を下げて不当に不合格にしたということが問題になりましたよね。
まだまだ教育に関する男女間のギャップは大きいのではないかと思います。
高校のクラス分けでも、理系クラスには男子が、文系クラスには女子が多かったのを覚えています。
昔からある偏見やイメージが、今にも引き継がれてそれが顕在化しているのかなと思うので、そのようなイメージが少しでもなくなるように、社会的な意識を変える必要があると思います
27 11月 2021 at 4:23
私も工学系の大学に進みたかったのですが高校の時男子ばかり物理をとり、女子は生物に偏っていたので流れで生物を選んでしまいました。大学も工学系はほぼ男性生徒ばかりなので抵抗があり辞めました。いつか女性割合が増えたら良いなと思います。やはり女子限定や女性入学割合を設定した方が良いのでしょうか。男女差別との境界が難しいですが